お盆の時期に

 防波堤灯台に向かう足取りは軽い。

磯の香り、波がテトラポットを打つ音。

地面に着く足から遠ざかるフナムシ達。

はしゃぐ子供の声。

リードの先は海の中。

お父さんが息子に釣りを指導している。

「ねぇパパ、リード上げなくてもいい?」

「何やってんだよ、こっちだよ。」

ちょっと厳しいパパかも…

このシチュエーションは心地よい。

この子と同じ年のころ、私もこうやって時間を過ごした。

ヒューーーン。

重りが勢いよく風を切って遠くまで飛んで行く。

長く伸びた釣り糸の先に何が掛かるんだろう。

「何が釣れるんですか?」

「キスやタイです。タイは子供ばかりなので返してます。」

厳しそうなお父さんは、お子さんにキャッチ・アンド・リリースも教えていたんだ。

「素敵なパパに連れて来てもらってよかったね。」

浜辺でビーチボートに相乗りをし、キャッキャッ言いながら楽しんでいる子供達の様子を見て、子育てするならこんな環境がいいなって、何のためらいもなく考えていた。

ひぐらしとアブラゼミの鳴き声が、何だか故郷を思い出させる。

岩井での遠泳救護の仕事を終え、母の延命を祈りながら御利益があります様にと、鋸山へ足を運んだ日もこんな気持ちだったのかな。

思い出せば今でも、涙が頬を濡らします。

この時期、遠くから手を合わせています。

お父さん、お母さんと極楽浄土で仲良くしてるかしら?





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