人生のレシピ
「ことえちゃん手伝って〜」 キャンパスノートに書き綴る鉛筆を置き、階段を降りた。 「何してたの?」 「ん?小説 … 」 「お母さん忙しいから手伝って。」 子供の頃から物語りや詩を描く事が好きで、随筆クラブで活動する事もあった。 ユーモアのある国語の先生から指導を受ける時間は、心地良く楽しかった。 「琴絵さん、文章はダラダラ長く書けばいいってもんじゃない。伝えたい事を簡潔に、起承転結で書いてみて。」 自分が書いた詩や標語、小説が表彰されたり、新聞に載ったりすれば励みにもなった。 いつか自分が描いたストーリーが映画になればいいなと時間があればメモに残した。 その瞬間の出来事や感情は、時間と共に消え薄れる。 良い事も悪い事も嬉しい事も恥ずかしい事も何もかも事実を記録に残した。 嫌な記憶はプラスになる様にストーリーを変えた。 園児の頃からメガネをかけての生活で、男の子にメガネザルと言われ馬鹿にされた。 子供ながらに、そんな嫌なことを言う仲間のそばにいたくなくて、ひとり遊びをする様になった。 「メガネザル、メガネザルが来た、ギョロ目、ケント・デリカットや。」そんな言葉は、思春期に入ってもトラウマとなっていた。 字が見えにくくて、勉強に集中出来ないのに、メガネが嫌でメガネを掛けずに学校へ行った。 克服する為に、手伝いをして小遣いを貯めて、コンタクトレンズを買った。 大人になれば、 " 目が大きく見える方がいいじゃん " と考える様になった。 TPOに合わせて眼鏡を作りファッションのひとつに取り入れた。 今では、メガネはお気に入りのアクセサリー ♡ 優秀な姉と比較され、周りの大人からは常々低い評価をされながら育った。 そんな環境にいる自分が嫌で、ダメ出しされる度に、ポジティブフィードバックを自分自身に繰り返し伝えた。 誰かに指示をされる訳でもなく、自分で選んだ道は、決して楽でも贅沢でもないかもしれない。 そんなとき母はいつも褒めてくれた。 琴絵ちゃんはがんばってる、お母さん嬉しいと。 母の応援してくれた時を思い返し、穏やかな良い環境は付いて回っていると常々思っている。 意識して、安全安心な環境を選んでいれば、自然と幸福な時間へと繋がるのだと実感している。 生まれ育った環境や選んだ道で、今の自分という人格が出来上がったのだろう。 子供の頃に居心地の良い仲間と...