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wonderful

 血痕が残る部屋に遺体はない。 遺体は解体しました。 彼女が家族をバラバラにした。 誰が彼女をバラバラにした? 脂肪層の肉片が、時間経過と共に、干し肉のように変化し、記録に残します。 SPが見張っています。 暴力団の発砲事件で、脳内に残った弾丸を摘出することができない。 複雑な sterben 。 顔がない体、足がない体、化学薬品で焼けただれた体、ローラーで引き裂かれた体、農薬を含んだ悪臭を放つ体・・・ 浮浪者を杜撰な扱いで死なせた、どう説明するの? フラッシュバックの彼女が、自傷行為です。 手首に20ヶ所以上のリストカット。 帰宅すれば、現実逃避。 不安でいっぱいの思考は、ハッピードラックで楽になるのです。 怖い夢をみました。 嘔気がして食事ができません。 好きなことだけして過ごしています。 執筆者:坂田琴絵

ドール

 あなたが愛しすぎたのですか? そのデータ、彼女に見つかりますよ。 「機械音痴やから大丈夫や。」 あなたの前で、できないふりをしているだけでしょ。 彼が、悪戯をしました。 ピュアな彼女は、フェイク映像に騙されたのですね。 彼女は動けないの。 ドール、ドール、ドール。 彼女を愛したのは、本当は誰? ドールじゃない生身の人間を丸裸にしたのは誰? シャットダウンできなくて、閉めても、閉じても、逃げても、隠れても・・・ 独りでいることができないのです。 いつも側に、SPがついています。 優しいボディーガードは、囚われの身となりました。 あなたのドールはどこへ行きましたか? あなたが一途であるが故に、犯してしまった事だとわかっています。 並んだドール、飾られたドール。 あなたの想いは、ドール達に投影されたのですね。 作品ができました。 秘話なのよ、封印なのよ、消去なのよ。 丸裸の犯罪、全部、ゴミにします。 執筆者:坂田琴絵 

おばあちゃんのこどもしょくどう

がっこうおわったら みんなでおばあちゃんのおみせいこう だがしもあるし おなかすいてたらごはんもたべれるんだ おかあさんしごとでおそくなるから ぼくひとりでるすばんしてるより おばあちゃんのところで しゅくだいしてるほうがたのしい おばあちゃんといっしょにつくった ぼくのおべんとう おとうさんとおかあさん よろこんでたべてくれるんだ おとうさんとおかあさん さいきんぼくにやさしいんだ 執筆者:坂田琴絵

大好きなお母さん

 お母さん、もう12時やから起きる。 まだ、夜中の12時です。外は真っ暗ですよ。 そう、朝の12時になったら起きる。 朝ごはん、何か食べたい物はありますか? 卵。 卵を焼きましょう。 どんな卵料理がいいですか? 卵焼き。 次は? 目玉焼き。 わかりました。私が朝ごはんを作って、起こしにきますね。 何でやな、お母さんはいいの。私が朝ごはん作るんや。 わかりました。朝になったらまた来ますね。 今夜は、お母さん役になりました。 執筆者:坂田琴絵

大切な人を呼んでます

 人が亡くなる頃、大切に思っている人の事を呼びます。 呼んでも大切な人は、側に来て寄り添ってはくれないのです。 その声は届かないのです。 ご自身の死を受け入れた時、少し辛い時間を過ごされます。 そんな時、安心できる人が側にいてくれたらと願うのは当然の事でしょう。 母が余命宣告をされて、自分の死を恐怖に感じ「琴絵ちゃん、お母さん怖い。」と言いました。 人が死ぬ前に、怖かったり悲しかったりするだなんて、とても辛い事です。 大切な人の代わりは出来なけど、少しでも気持ちが楽になって、穏やかな老後が過ごせたらと常々願っています。 介護の仕事を選んで、臨終に寄り添う時に思う事です。 執筆者:坂田琴絵

リング

 デカンタに入った赤ワインの香りと味は、場所とその日の体調や気分で変わる。 性分か高級ワインの味が良くわからない。 今夜の食卓は賑わっている。 ゲストが楽しげに食事をしている。 同じテーブル席に着いた男女は、目と目を見つめ合い、何を語り合っているのだろう。 家族の顔も見ずに、携帯操作に専念する事が、当たり前の時代になっている。 気の合う仲間同士、トークが止まらない。 そんな光景を目にしていると、自分にもそんな時があったんだと回想している。 慣れない職場での仕事で疲れ果て、帰宅してから家族の為に夕食を作るのが億劫な時は寄り道をした。 京王線乗り換え新宿駅で自分タイム。 ルミネやサザンタワーへ立ち寄り、邪念を忘れリフレッシュして帰宅した。 スタバのコーヒーかスタンドバーのサングリアかは、その日の気分だった。 京王百貨店のラスクは娘達の好物で、よく手土産にした。 夜勤明けの帰路で、京都リサーチパークに寄り道をし、デカンタに入った赤ワインを飲み干し、"夕飯は何作ろう"  だなんて考えたところで、食べてくれる人はいない。 回想や現在進行形の時間を過ごしながら、まごころこもったおもてなしの接遇を頂戴していると、破壊したマイホームを忘れている。 もてなしの計らいも自分に向き合う時間でもある。 芸を習得し芸妓として、お客様が喜んでくれる技を得た母に育てられた。 そんな母は、「勉強はお父さんに教えてもらいなさい。」と言い、"芸は身を助ける"と、歌や音楽、書写や絵の描き方や家事を日々教えてくれた。 父は、学校の勉強は100点じゃなければ頭が悪いと心配し、学習塾に通わせた。 父は勉強が出来るように、母は芸を身に付けるようにと言って聞かせた。 高校の進学面談で父は、京都に進学すると言った私を止めなかった。 「琴絵がそう決めたんじゃったらしようがなかろう。」と寂しそうに言った。 母は賛成も反対もせず「お母さんは何もしてあげられないけど、看護学校に通っている間は、琴絵ちゃんが好きな音楽を聴く事は我慢しなさい。コンポはそのうち送ってあげるから。ステレオはしばらくは我慢しなさいよ。」と言った。 あの頃によく聴いたマドンナやシンディローパーの曲は、今も聞き続け元気をもらっている。 お母さん、あの頃の大きなステレオは、今、私の耳の中に付いているんだよ。 絆の輪は、目には見えなくても...

心も技も磨きましょ

 テーブルに並んだカトラリーやプレートは綺麗でしょ。 ワイングラスはどっちに置けばいい? 時間があったら真っ白な手袋して、シルバーを磨きましょ。 「坂田さーん、ルームサービスお願いします。この後は、レストランでモーニング、ランチはオーダーバイキング入ってください。」 インカムから、どんどん指示が飛んできます。 ルームサービスでお部屋に運んだプレートからソーセージが飛び出したの。 「お客様、大変失礼しました。すぐにお取替え致します。」 お客様に背中を見せてはいけません。 後手で扉を閉めてはいけません。 学生時代、茶室の心得を茶道の先生が教えてくれました。 朝の慌しいキッチンまで、お客様がいないところは急足です。 お客様に謝罪、シェフに謝罪。 今日のモーニングの予想人数は360名です。 よろしくお願いします。 バックヤードもバッシングも大忙し。 ウェイティングでの隙間時間に緩んだ気持ちが手足に現れる。 「坂田さん、足元、気をつけて。」 休憩時間には制服が汚れていないか、ヘアメイクに乱れはないか、仲間同士でチェック。 さぁ、ディナーも頑張りましょ。 開業に向かっての仲間達とのワークを思い出しています。 ひとりで過ごす時間、テーブルに飾られた花やオプジェが見えないのです。 好きなレディグレイが、喉の渇きを満たす為だけの飲料となっているのです。 お気に入りのエリザベスアーデンが、ムカムカする香となりつつあります。 人の心は、人の気持ちは、いつも同じではありません。 荒れ果てた戦地で、仲間と笑顔で過ごせる技を身に着けたようです。 人生での自分との戦争は、一生終わらないのでしょう。 その戦時中を、いかに前向きに活動するかを、年長者様が教えてくださいました。 お婆ちゃん、眠くないのですか? なんか美味しい物、食べたいな。 今夜のお夜食は何にしましょうかね。 今、何時? 夜中の2時ですよ。 美味しい物、食べたいな。 用意しますね。 今、何時? 夜中の2時ですよ。 嫌なことはすぐに忘れるといいのよね、お母さん。 お婆ちゃん、おやすみなさい。 執筆者:坂田琴絵