香を聞くと般若心経を聞く
薄明りの部屋に白檀の香りを聞き、般若心経を聞き、現在と過去が行ったり来たり… ソファーに座り独り、好きなワインを飲みながら、楽しかったことや辛かったことが、心のポケットからどんどん出て来るのです。 余命宣告された年長者様は、治療を拒否して私に「死にたい」と言いました。 何度も何度も、私に言いました。 末期癌で痛くて苦しくて、家族と離れての生活で、不安で辛かったのです。 私は、その年長者様の辛さをどれだけ理解する事が出来たのか、少しでも、その辛さを緩和するお手伝いが出来たのだろうかと考える事があります。 私の実母は、末期癌で余命宣告をされました。 手術をしても延命するか分からないけど、「お母さん死にたくない」と辛い治療を受けました。 母の生きたいというその気持ちは、私に命の尊さを教えてくれました。 人の命に寄り添う時、自分の身の置き所がないと感じる時間もあります。 今夜も、香を聞き、般若心経を聞き、過去や現在の落ち着かない精神を、内観療法と併せて浄化し明日を迎えるのです。 お母さん、おやすみなさい。 執筆者:坂田琴絵