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消せない記憶

 許すこと、忘れることって、どんなに勉強しても努力しても、ずっとずっと大きな課題である。 学童期に理不尽な振る舞いを目の当たりにし、悲しかったり、寂しかったり、怒りを感じたりした。 そんな感情が芽生えた時、滑走路のよく見える海岸に、ペットの猫と一緒に行った。 「メモル、おいで、海に行くよ。」 メモルは、私の後をついてきては先に進み、一緒に海に行くことを楽しみにしている様だった。 海水浴には向かない河原の海岸で過ごす時間は、波の音、飛行機の離発着の音、船が行き交う音、車海老の養殖場の働く人達の声が聞こえて来た。 誰かと交流するでもなく、話すわけでもなく、ただ、目の前に広がる自然や働く人達の尽力に圧倒されていた。 飛行機の離発着時は、体が揺れる程の大きな音で、その音を聞き育った私としては、飛行機を見ていると何故かほっとしたものだ。 「メモル、帰ろう」 バケツに海水を汲み、自宅に帰る。 赤ちゃんエイが待っている。 そんな日々を繰り返していると、知らぬ間に邪念も消えていた。 木枯らしで、乾燥した肌が痛い。 荒れた唇を気にしてくれたのは、母の弟の叔父さんだった。