ドラックロックの落とし穴
心理テストが終わった。 精神病棟で過ごす私、作業療法で作る作品。 全てが診断の評価となる。 「薬物療法主体ではなくて、精神療法を中心にしていきましょう。」 医療保護入院中の身、法に定められた入院形態を維持しなければならない。 私は、フレンドリーな関係の患者さまに本当のことを話せずにいた。 女子部屋では、年齢も価値観も全く違う人達が共通の話題でトークが盛り上がった。 大抵は愚痴の聞き役が多かったが、これまでになかった世界で、まるで実習病院に来ているのかと錯覚を起こしそうだった。 山登りがお好きな患者さまが、よく私の精神面を気遣ってくださり、「ことちゃん、〇〇があるよ。」などと親切に声を掛けてくれた。 みんなで体操やアクティビティをしたり、セラピーしたり、グループワークしたり…。 家族から離れて、孤立していた私を救ってくれたのは、心理療法と患者さまだった。 「薬を飲まなければ退院させない。」と言ったのは誰? そんな嘘の様な本当の話しが、私の入院生活を長引かせた。 執筆者:坂田琴絵