お母さんが泣いている
「お母さん、入院してからの面会についてどうする?」
子供の頃に見た母は、眉間にシワを寄せたり、誰も居ない部屋で泣いている姿でした。
母の独身時代のアルバムを見ると、友人や職場の仲間達と楽しそうに笑顔で写真に映っていました。
旅行先での様子や、三味線、花柳流の舞台の様子など、着物姿の母はどれも綺麗でした。
当時のファッションを見てもとても華やかでしたが、私が子供の頃の母は、化粧もせずに日常の家事に追われて子育てをしている母でした。
「お母さん、何でお化粧しないの?」と聞いたことがあります。
「お嫁にきてお化粧してたけど、こんな田舎で化粧しち、何処に行くんかえって言われたから辞めた。」と、そんな環境に不満そうでした。
父以外の周りの大人が、母にDVをしたり、母の居ないところでネガティブな発言ばかりしているのをよく聞いていました。
母は、嫁いびりにあっていました。
精神的に追い詰められた母は、うつ病となりよく体調不良を訴えていました。
周りの大人達がどんなに母を悪く言っても、母はいつも気丈でしたし、食事の大切さや作法をきちんと教えてくれました。時には、楽器を通して音楽の楽しみ方や着物の着方、日本舞踊の舞を教えてくれました。また、植物や動物を育てる喜びも教え続けてくれました。
そんな母がずっと笑顔でいてくれたら、娘の私は幸せでしたから、側にいていつも母の話しを聞くことが安心できる何よりの方法でした。
過渡期で道に迷った私を、母が担任の先生と一緒にそっと、正しい方向に進めるようにナビゲーションしてくれました。だから、今の自分がいるのだと言い尽くせないほど感謝しています。
「ことえちゃん、お母さん誰にも会いたくないわ。」
終末期、末期癌の治療で母はそんな大人達に会いたくないといい、それから面会謝絶の日がはじまったのです。
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