浄土へのお見送り

お棺に納められた父の亡骸は、はじめて見る痩せ細った姿であった。
激動の時を過ごしてきた日々と、受入れがたい事実の中で、今は目の前で起きている事実だけに向き合う事に務めた。
「お父さん、浄土へ道に迷わず、お母さんの所へ行ってね。」
絶やさぬ火に念じながら、一夜を過ごした。
出棺の時、父は母がこよなく愛した蘭やカサブランカを胸に抱き、お棺の蓋が閉じられた。
霊柩車が出棺する時のクラクションの音は、更に父の死を受け入れるタイミングとなった。
霊柩車は海の見える物静かな道を走る。
スケジュール通りに用意された部屋で、父の亡骸に点火する。
シルクロードが流れる収骨室で、変わり果てた父の姿を目にし、これで父との二人三脚が完全に終わったと確信した。

今、私が見ている遺影はいつも前向きに生きた父と母の姿である。
お父さん、お母さん、育ててくれてありがとう。

このブログの人気の投稿

ヤプログ!《Peace on earth ことちゃん》の続き

ナースだけどフリーター